ラビとアレンのどきどき育児日記 一日目 タイトル 「なんでこんなことに」 今日学校から帰ってきたら、僕のかわいい奥さんが愛用のミニマックを真剣な顔をしていじってた。なにしてるのかと思ったら、どうやらブログをつくったらしいんだ。 なんでまた、いきなりそんなこと!・・・もちろん僕は聞いたんだけど、かれときたら、「主婦のたしなみとして」 ってそれだけ。(え、もしかして広告でお小遣いかせぎでもするつもり?) ジュニアを見ててっていうので、(なにしろ、こいつはちびのくせに走り回るから、うっかりするとふみつけそうになるんだ)、しかたなく、僕はさっき買ってきたZAi(株の雑誌)を読みながらジュニアを見張ることになってしまった。 で、そのまま1時間。なにをそんなに手間取ってたのか知らないけど、とにかくジュニアがもう眠くなってうとうとしだしたころ、ラビがうれしそうに「できたさー!」って叫んだ。ああそう、よかったね、って言ったら、はい、じゃあアレンが今日のぶんねって言うんだ。・・・え?なんだって? そんなわけで、僕は今日からこの育児日記なるものを、ラビと交代でつけることになってしまった。かれはマックを僕にゆずってから、ジュニアを抱き上げて、いまはもう子供部屋(さいきん僕らは2LDKのアパートに引っ越した) にひっこんでいる。 ・・・・べつに、日記を書くことがいやなわけではないんだけど(あの息子に言いたいことはやまほどあるし)、そもそも、どうしてラビに子供ができちゃったのかさえ、僕はまだあまりよくわかっていないんだ。だって、 ところでさっきの話だけど、そもそもきみたちウサ科って、なにものなのさ。 追記 ウサ科についてのはなしを聞いていたら、いつのまにかこんな時間になってしまった。あんなに長い話を聞いたのに、はっきり言ってウサ科の生態についてはほとんど理解できなかった。なんで? 奥さんが、ベットルームに引っ込んじゃったので、今日は僕も寝ることにするよ。 (12がつ2にち ごぜん1じ32ふん パパ) * 二日目 タイトル「りんごうさぎ」 今日の午前中、宅急便でりんごが届いた。送り主はよく見なかったんだけど、アレンに届いたもんだし、食っても大丈夫かと思ってランチのデザートにすることにした。ジュニアはまだあんまり歯が丈夫じゃないので、皮はむくことにしている。(てか、そういやジャパニーズってりんごの皮食わねえよな) そうしたらジュニアのやつが、オレの『お弁当のおかず(○美堂出版)』 を棚から出してきて、「ママこれつくってよ」って言うんだ。オレはそれをちょっと覗いて、おもわず背筋が凍りついた。こらこらこら、ダメだろジュニア!それじゃあ共食いになっちゃうって! まったく、りんごうさぎなんてものを考えついたやつを、ハンマーでぶっとばしてやりたいさ。ほんと、ウサ科を理解してないやつらは困るよな。ジュニアにもよく言いきかせておかないと。 で、そのことを帰ってきたハニーに話したら、「・・・え、そうなの?」って、ちょっとびっくりしてた。なんだよアレン、そのくらい常識だろ。ひと科だって、ジンジャークッキーは食わずにツリーにかざってるさ。「・・・いや、でもべつに食べたって、」 言いかけて、アレンはとつぜん気づいたように、「そういえば、こんなにいいりんごどうしたのさ」って聞いてくる。それでオレは、昼間届いた荷物の伝票をアレンに渡した。アレンはそれを見てものすごくびっくりして、がたがたふるえながら、オレに聞いた。「ら、ラビ。これ、もちろん、食べちゃったんだよね・・・?」 オレがうなづくと、アレンはそれからしばらくは青い顔で部屋の中を歩き回り、ぶつぶつひとりごとを言っていた。 「なななんであの人が・・・学校では何も言ってなかったのに。そもそも、あの腐れ教授が僕に贈り物なんて・・・あああ・・」 30分くらいそうしたあと、あいつは急に思いついたように携帯を取り出し、だれかのところへかけていた。アニタって言ってたから、たぶんあいつの女友達だとおもう。姉さんみたいなもんだっていつか言っていたので、オレはぜんっぜん心配してない。ほんとうさ。 ああそうそう。けっきょく送られてきたりんごは、アニタからのもので、教授の名前をつかったのはちょっとした悪ふざけだったらしい。それでアレンは、電話をしたあとつかれきったようにベットのうえでのびていた。やっぱ日本のりんごはうまいよな。送られてきたのは長野のりんごで、アニタのお客さんの奥さんの実家がりんご農園なので、毎年どっさり送られてくるんだそうだ。 ・・・えっと、シンシュウって、長野のことだよな? (12がつ3にち ごご8じ20ふん ママ) * タイトル「ここ最近」 最近うちの奥さんが通販雑誌にはまっている。それはぜんぜん構わないんだけど、はっきり言って、買いこんでくる雑誌が子供服のばかりっていうのは勘弁してほしいんだ。・・・・あ、ラビ、これぐちじゃないよ。昼間も話しただろ? もう3冊もあるんだから、次は来月にしたらどう?って。 さっきジュニアが寝る前に、めずらしく僕のところへやってきた。(僕らはそんなに仲のいい父子じゃない) ソファの前で何か言いたそうにしているものだから、しかたなく僕の横をあけてやったら、(とてもちびとは思えないような顔で) 睨んでくるので、言いたいことがあるなら言いなよ、と言ってやった。そうしたらあいつは、 「パパがぼくのふみ台に足をのせてるんだ」 て言って、僕が足をどけて踏み台を押しやるまえに、僕の足をふみつけてソファによじ登った。ラビのときは自力で跳び上がるくせに! よほど文句を言ってやろうかと思っていると、あいつはこんなときだけか弱いチビウサギをよそおって(もちろん、そうじゃないことを僕だけは知っている)、「ねえ、パパ」 って言ってくるんだ。そんな顔をされたら、僕だって大人気なくしかるわけにもいかないので(泣かれたらことだ)、なんだよ、というと、話はくだんの通販についてのことだった。そういえば、さっきからラビがメジャーを取り出して身長を測ってたなって思っていると、ジュニアはものすごく心配そうな顔で、「でも、ママはぜったいに、ぼくにあのまっしろいフリフリのパジャマをきせる気なんだ」 と言った。 パパからも言ってあげてよ、ぼくはおとこのこなんだって! と、ジュニアが僕も最近ちょっと心配していたことを言ったから、 ねえ、ハニー、ジュニアのことはどうでも・・・・いや、まだ子供だからそう気にしなくてもいいと思うけど、お願いだから、親子そろっておそろいとか、へんなかん違いをして3着そろえないでほしいんだ。パジャマならいまもじゅうぶん足りてるよ。きみはそう思わない? (12がつ4にち ごぜん0じ5ふん パパ) * タイトル「・・・・・。」 昨日、駅前の本屋で「うさぎのきもち」という飼いウサギのための雑誌をみつけた。なんかすごく読んでみたかったんだけど、買って帰ったら怒られそうなので、ぱらぱらめくっただけでやめておいた。 (ウサギはストレスに弱いなんてよく言うけど、それって、あの動物がそもそも楽観的だからじゃないんだろうか。ウサギがストレスを感じるなんて、よほどのことだ。・・・・ちなみに、うちの奥さんは、いまだに僕がジュニアに対して厳格な父親を演じているものと思っている。あえて否定はしないけどさ) 奥さんがあと二時間で買い物からかえってくるので、この日記はそれまでに消去します。 (12がつ8にち ごご3じ12ふん パパ) 裏コンビニエンスにもどる |